名探偵コナン映画「沈黙の15分」をみて。(ネタバレ注意、長文注意)

 観たのは、G.W.なのですが、今になって書くとか申し訳ありません。
 といいますのは、G.W.に観る方が多いと思いまして、感想を書くのを控えていました。ネタばれがありますので、みたなくないかたは注意を。

 今回の作品について、原作者の青山剛昌氏は、劇場用のチラシの中で「この映画の売りは、アクションに次ぐアクション!たぶん今までの中で一番動いているんじゃないかなぁ」と言っております。原作者がそう言うくらいだから、オープニング・クレジットが出るまでの冒頭10分のアクション・シーンは、007シリーズの導入部と同じくらいの迫力だろうと私の勝手な予想(笑)
 首都高でのトンネル爆破事件で、その真上を通っている都営地下鉄の新線も破壊されてしまう。この部分は映画の予告にも爆破シーンが描かれている。コナンの機転で間一髪、走行している車両本体の直撃は免れるものの、首都高のトンネル内に落下し、非常用ブレーキで減速したまま、トンネル外に飛び出してしまう。そして、高架道路のカーブ地点の側壁を貫いて、車両の一部が空中に浮いた状態で止まる。そう、その様子は、阪神淡路大震災で破断した高架道路から落ちそうになったまま停止したバスの姿。

 そして、クライマックスのダムの爆破シーンも、東日本大震災が内陸部で発生していたら、原子力発電所ではなく、水力発電所が、この映画と同様の事態に陥っていたと容易に想像できる。エンドロールを見て、思わず唸るかたが多いのではないだろうか。このシーンについてだと思うが、「取材協力 関西電力」というクレジットがあった。もし、この映画の公開予定が1ヵ月早かったら、そして、取材協力先が東京電力だったら、公開が延期されたかもしれない。3月12日以降、公開延期の議論は、製作・配給サイドにまったくないのかな。
 公開された以上、そんなことを指摘しても意味がないかも知れない。しかし、コナン・シリーズかつてない大規模テロのシーンを、オープニングとクライマックスで2回、上映時間にして1/4も占める構成にしたことが、本来のミステリー映画としては致命的な破綻をもたらしてしまったのは、どうしようもない。(この点は、後ほど改めて指摘しよう。)

 冒頭、コナンがスケボーを使って、トンネル内に戻るシーンをでは、今まで以上にパワーアップしたものが見れるアクションとなっている。
今回は、それに加えて、コナンが持ち歩いている2台の携帯電話が、ラブストーリーとしてのコナン・シリーズの「胸キュン・アイテム」となっているので、必見(笑)そして、そのスケボーが、冬の雪国でも使用できるよう、スノボーに機能アップされており、クライマックスのアクション・シーンの過激さと相乗効果で、今回のコナンの活躍ぶりは、頭脳を使う探偵ではなく、体を張ったアクション・ヒーローなっている。ここはあえて、今回のタイトルに、「名探偵コナン」ではなく、「アクションヒーロー・コナン」とした方がよかったのではないのだろうかね。

 重要なポイントは、タイトルにある「15分」の意味。謎の重要な鍵として、「15分」に意味があるのではなく、主にアクション映画としてのキーワードとなるのだが、少なくとも、4つの意味が与えられている。その4つ目の意味は、エンドロールが終わった後のサービス・カットの最後で明らかにされる。その後に「第16作製作決定」の予告が出るのも、いつもどおりのお約束事なのに、エンドロールの途中で席を立つ人がかなりいたのは、どうしたことか。(呆れて席をたったのかもしれない。)この4つの意味をすべて明らかにすることも、以下の記事のポイントとなっていく。
 コナン・シリーズの主題歌は、テレビ版も含め、Jポップスのヒット曲のオン・パレードでもある。その主題歌集のアルバムを持っているが、今回、エンドロールに流れるのは、B’zの「Don’t Wanna Lie」。5年ぶりの劇場版への登場で、これまでZARDや倉木麻衣と並んでいた3回の記録を更新し、4回目となった。

さらに、もう1つの話題が、「戦場のカメラマン」渡部陽一の声優初挑戦ということ。どこに出るか、注意していなくても、モロ本人そっくりの髭面で現れ、いつものゆっくりした口調で話すので、誰でも分かる。予想よりも台詞が多く、笑えたのは、彼が退場するとき、少年探偵団の一員、元太が発する一言。うん、観てる子どもたちは笑っていた

犯人の名前までは明かしませんが、ネタバレすれすれのところまで、ストーリーを示します。まだ作品を観ていない人は、鑑賞後にお読みください。

 映画は、一粒の雪の結晶が舞い降りるシーンから始まる。劇場版15作目にして、初めて冬場が舞台となる。本編で分かるが、今回の事件の鍵を握る立原冬馬少年が、8年前に、謎の人物に終われ、雪道から転落するシーンが描かれる。彼が手にしている黒い物体も、いつも首に掛けていた双眼鏡だと、後のシーンで分かる。

 場面は一転して、都営地下鉄の東都線の開通式のシーンになる。
さらに、コナンが少年探偵団のメンバーたちと阿笠博士の運転する車に乗っているシーンに変わり、車内の会話で、元国土交通大臣の朝倉都知事に脅迫状が届いていることを知る。車は東都線のコースの真下を通るトンネルに入り、コナンは路肩に怪しい人物を発見。
トンネルを出たところで車を止めさせたコナンは、スケボーでトンネル内に戻り、謎の男が発信機で爆弾を作動させようしていることに気づき、記念車両に都知事と共に乗車している目暮警部の携帯電話に危険を伝え、非常停止させる。

 その直後のシーンが、上に述べた内容で、この間、10分。
ようやくオープニング・クレジットになる。お約束事である、コナンが灰原と共に小学生になった経緯などが紹介され、コナンの決め台詞「真実はいつも1つ」が口にされる。

 本編は、舞台となる北ノ沢村の様子の紹介から始まる。北ノ沢ダムの建設に伴い村が移設され、新たに開村して5周年を記念するフェスティバルが開催される。
 このダムは、朝倉都知事が大臣だった頃に手掛けた事業で、記念フェスティバルにも当初、知事は出席する予定だったことから、当然、地下鉄の爆破事件との関連が疑われる。

 コナンをはじめ、少年探偵団のほか、コナンの前身とも言うべき工藤新一のガールフレンド、毛利蘭とその父である名(迷)探偵、毛利小五郎も同行して、いつものメンバー全員が、北ノ沢村に来ている。(上映開始からここまでで20分)

 コナンは、ダム建設の経緯などを調べに村役場に出向くが、先客の若い男が2人いて、ダム周辺の現在の地図と水没前の古い地図を職員から貰っているのを見咎める。そして、そのうちの1人が、ポケットにスタンガンを持っていることも。この2人が誰かも、暫くすると分かる。

 元太が村の名物を食べ過ぎて、診療所で看護士・立原冬美の手当てを受ける。この若い女性も、訳ありの雰囲気。
夜、少年探偵団の一行が宿舎のロッジを出て、外に出かける。その後を追おうとするコナンだが、新一用の携帯に蘭から電話が入る。
蘭は、今の居場所をコナンに伝え、お土産に何がいいかを聞く。
コナンは、蘭のすぐ近くにいて、雪の上に土産物の品名を書くが、慌てて元太たちを追うことにしたため、消し忘れる。
ロッジの入り口で電話を終えた蘭が、今、自分が話したことと同じ内容のメモを雪の上に見つけて、驚く。いつもの蘭と新一のニアミス・シーンで、女性ファンは胸キュンとするだろう。
そのときは新一がここに来ていると思った蘭だったが、ラストでの彼女の解釈は、ちょっと突っ込みたくなるもので、2人の関係は・・・

 調子に乗って雪道で遭難しかけた元太たちを、コナンと灰原が見つけるが、車でないと戻れない。
元太と光彦の言い合いになるが、そのとき仲裁に入るコナンが口にする。「一度口から出しちまった言葉は、もう元には戻せねーんだぞ…言葉は刃物なんだ。使い方を間違えると、やっかいな凶器になる…言葉のすれ違いで一生の友達を失うこともあるんだ…」という台詞は、政治家やマスコミ関係者はもとより、私たちブロガーも注意しないといけないこと。
阿笠博士を呼ぶと怒られると元太たちが思っているところへ、たまたま通りかかった車に助けられる。
その車を運転していたのが、裏山で独り暮らしている武藤岳彦で、ダム建設に最後まで反対していた若者だった。(上映開始からここまでで35分)

 ロッジのロビーで待ち合わせた男女5人の若者たち。
先の立原冬美と武藤岳彦のほか、残る2人の男性は、コナンが村役場で出会った氷川尚吾と山尾渓介であり、もう1人の女性は、ロッジのフロント係である遠野みずきだ。
水没前の分校のクラスメイトたち(と言っても生徒全員)で、8年ぶりの再会とのことだ。
なぜ8年間も会わずにいたのか、そして、今(フェスティバルの開催に合わせるかのように)顔を揃えたのか。彼らの間の重要な関係の1つが、このとき明らかにされる。
 山尾が遠野の妹を交通事故死させ、8年間、刑務所に入っていた。また、氷川は、住んでいた土地を売って、東京へ移ったのだった。

 この後、ロッジの前で少年探偵団が雪合戦をしていると、向き合った位置にある家の窓から1人の少年が、その様子を見ている。彼が、最初のシーンで転落し、意識不明の状態が続いていた立原冬馬。名前から分かるように、立原冬美の息子だった。
 冬馬は、もう15歳。後のシーンで、灰原がいみじくも言うように、自分とコナンは、子供の外見で精神は大人であるのに対して、冬馬は、その逆、つまり外見は少年で、中身は幼児のまま。

 このシーンで、もう1つの重要な事実が分かる。それは、冬馬が転落した日、山尾が交通事故を起こした日と同じだったのだ。冬馬は、趣味の白鳥観察の帰りに事故に合ったと思われていたが、山尾の事件と関係があるのか。さらに、もう1つ、最初に提起したタイトルの意味に関わる事実を、私たちは教えられる。それは、立原冬美の両親、すなわち冬馬の祖父母が雪崩で死亡していたのだ。雪崩の発生から30分経過して発見され、15分以内であれば助かっていたという事実だ。(映画上映開始からここまでで50分)

 少年探偵団たちは、白鳥の観察のため湖に行くが、コナンの関心事は、山根が交通事故を起こした場所と冬馬が倒れていた場所との位置関係だった。
 その途中、雪の上に座る氷川を見つける。彼は死亡していたが、元々、心臓が弱かった。雪の上の足跡は、彼がその場所まで歩いてきたものと思われる1つしかない。密室物ミステリのトリックの定番だが、コナンが簡単に解いてしまう。問題は、その場所が武藤の暮らしている山小屋の途中にあること。

 スタートからちょうど60分くらいだったか、この氷川の死をめぐって、ロッジの食堂で同級生の4人が、新潟県警の刑事の取調べを受ける。その担当刑事が、戦場カメラマンのそっくりさん。
 この取調べの中で、氷川がかつて遠野みずきにプロポーズして、断られたことが分かる。
 繰り返すが、刑事が帰ろうとしたとき、元太が刑事の喋り方について言う台詞を聞き逃さないように。観ている人たちはクスクス笑っていた。
 この後のシーンで、雪国でしか見れない美しい自然現象を、少年探偵団たちは目にすることになる。
それは、ダイヤモンドダストの光だが、その煌きに反応する冬馬。何かを思い出しそうになるが、なぜ光なのか。
 冬馬の家の前に、かつての同級生の少女が来ているのを見掛けたコナンは、声を掛け、彼女が持ってきた8年前の写真と四つ折りの紙を見て、何か閃く。それは、氷川たちがロッジで再会したときに見ていた新聞らしきものに、何かが書かれていたというヒントだった。

 立ち入り禁止のテープが貼られた氷川の宿泊室に忍び込んだコナンは、彼の上着のポケットから、その新聞記事を見つけ出す。
他の者からは見えなかった面に書かれていた記事の内容とは・・・。
 そして、その記事の事件が起きた日付は、山尾の交通事故の前日だったのだ。
 コナンが真相解明に大きく近づいたとき、固定と携帯の両方の電話基地局が次々と爆破される。

 一方、冬馬と一緒に外に出掛けた元太たちは、何者かに尾行されていることに気づき、逃げる。そのとき、冬馬は、かつて同じような目に合ったことを思い出す。
遂に、追っ手は銃を構え、発砲する。
コナンと灰原が、洞窟に隠れていた冬馬たちを見つけ、洞窟の奥へ行くしかないと決断する。(映画上映開始からここまでで80分)

 その途中、推理を語り出すコナン。遂に、真犯人の名と彼がこれからやろうとしているダム爆破の理由を暴く。コナンが暴いた真相に裏はないのか。(コナンの解説の中には、私が途中で説明を省略した、最初は眼鏡を着けていた遠野みずきが、美人に弱い毛利小五郎の助言に従ったかのように、コンタクトレンズに変えた理由も、含まれている。)
 そう、なぜか彼女が眼鏡を外したのは、冬馬が目覚めたときからだった。そもそも、なぜ彼女は、妹を亡くした後も、悲しい思い出しかない北ノ沢村を離れず、ロッジのフロント係になったのか。

 洞窟から出たコナン一行。コナンはダムの職員に行くと言ってバラバラになる。が、行くと、ダム職員が気絶させられていた。灰原は武藤さんの小屋に行くが、武藤さんもスタンガンにやられて気絶。していることを探偵バッヂで話していたところに、コナンに魔の手が・・・。
コナンもスタンガンでやれる。
ダム職員が小五郎に爆弾をダムに仕掛けられたことを告げる。
コナンはライフ銃とスタンガンで犯人に立ち向かうが・・・。
遠野みずきさんによってコナンは・・・・
そして、山尾さんと遠野さんが・・・・。

 起爆装置がはいり、ダムの外壁が次々に爆弾が爆破し一気に放出された水流を変えるため、コナンは決死の行動に出る。
 車でダムに向かっていた蘭の頭上を、コナンがスノーボードで飛び越える。2人の目が合うこのシーンも、女子の胸を締めつけるだろう。
そして、雪崩に襲われたコナンが埋められた場所を探し出すために、蘭はまずコナンの携帯の番号に発信する。コナンは助かるのか!というハラハラドキドキが伝わる。次は、新一の携帯に…。近くにいる筈の彼の助けを求めるために…。このシーンが、一番、女子の感涙を誘うだろう。

 そして、映画のチラシに書かれた「ラスト15分、予測不可能」の15分とは、山根が倒れてからコナンが救出されるまでの一連のクライマックス・シーンのことであり、3つ目の15分の意味だ。

 エンドロールの後、立原冬馬や遠野みずき、さらには山尾渓介が、その後、どうなったかが語られる。
お土産を買うのを忘れた少年探偵団たち。そのときの彼らの会話で、蘭は、雪の上に新一が書いたと思ったのが誤解だったと考え直してしまう。
 自分もお土産をまだ買っていないことに気づいた蘭が、ロッジの中に戻ろうとしたとき、毛利小五郎が口にした15分。それが、4つ目の意味だ。

 繰り返すと、アクション・シーンの迫力を高めることだけに目を奪われて、ミステリの根幹をなす犯行動機の荒唐無稽さを無視したのが、今回の第15作だ。
この無理な構図って、福島原発の事故のそれに似ていると思う。

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